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70歳以上の機関誌「銀杏」
シリーズ「日本古来の文化」
 
 
歌舞伎篇5 音楽について
 
 
志摩 淳一(80歳)
 
     
 

 歌舞伎で使われる音楽は、舞踊に多く使われる。その種類は、長唄、清元、常磐津などである。そのうちでは長唄が一番多く使われると思う。よく上演されるものとしては、『京鹿子娘道成寺』(きょうかのこむすめどうじょうじ)、『藤娘』(ふじむすめ)などがあり、清元では、『保名』(やすな)、『色彩間苅豆ーかさね』(いろもようちょっとかりまめ)等、常磐津では、『釣女』(つりおんな)、『積恋雪関扉』(つもるこいゆきのせきのと)、『年増』(としま)等があるが、義太夫は音楽と言うより、語り物として状況説明や、ナレーションとして使われることが多いが、時として、竹本連中として舞踊にも用いられる場合がある。
 長唄は語り物としての要素もあるが、雰囲気を盛り上げる要素もあり、三味線や太鼓、笛、鼓などと合奏されることも多く賑やかな雰囲気を持っている。
 清元は連綿たる情緒を表す語り物として、粋な感じを与えることが多いが、『六歌仙』(ろっかせん)の中の『喜撰』(きせん)などは、軽妙、洒脱かつ色気たっぷりな雰囲気
である。
 常磐津は、やはり語り物の色彩が濃いが、義太夫よりは軽快な感じがする。

 舞踊以外でも、世話物で情緒を表すものとして、下座音楽、略して下座(げざ)が盛んに用いられる。下座は舞台下手の囲われた中で演奏されたり、歌われたりするので観客の目には触れないが、役者の出入りや仕草のキッカケに重要な役目をする。この囲いには中から舞台が見えるよう、また音がよく流れるように奇数の短冊形の切れ目が開けてある。

 次に、音楽ではないがツケというものがある。これは舞台の上手で、一人の人が舞台のキッカケに際したり、役者の動きを強調するために、ツケ板という板を樫の木製の拍子木で叩いて音を出すもので、重要な役目を担っている。男役の場合には強く、女役の場合には弱く打つ。
 極端な例としては、手拭いを落とした時にも軽くツケを打って注目させる役目をする。従って、音楽というよりは効果音である。本来これに似た例としては、歌舞伎で用いられる手法として、雪の降る場面で、太鼓を弱く打ってその感じを表現している。
 音楽に用いられる楽器としては、三味線が一番活躍する。極論すれば三味線だけあれば、
一応歌舞伎が演じられると言っても過言でないくらいである。勿論、笛、太鼓、鼓、琴な
ども重要ではあるが・・・。

 
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