|
移民法を変え、特別のビザを発給して外国人を受け入れているのですか。
はい。ロングステイ(長期滞在)は政府の政策の一つです。
日本ほどではないですが、タイでも高齢化が進んでいます。二年前は八・九%でしたが、高齢者とされる六十歳以上が人口の十%近くいます。平均寿命は女性は七十四、男性は六十九歳くらいといわれています。寿命は延びてきていますし、また少子化でもあります。ぼくも家内も八人きょうだいですが、子どもは二人。今はバンコクなどの都市では住まい(の確保)も問題ですし。しかし地方に行くとまだ、広い所に住んでいる人もいる。日本に比べると土地は広いし暖かいこともあって、日本の方だけでなく外国の方々にロングステイしていただこうとしているわけです。
一定の収入がある五十歳以上の方々に仕事をせずゆっくりしていただきます。バンコクは一番いろいろなものが揃っているのですが、交通の渋滞などがあるため、チェンマイだとか都会から少し離れて空気のいい所で過すことも考えられます。そういう外国の方々のために一年間滞在できるビザを発給しています。
日本では年金が減っているようですが、タイでは同じ金額で優雅に暮らしていただけます。ぼくの給料で申し上げますと、二万バーツくらいで、今の為替でいうと六万円くらい。バンコクに住んでいて、専業主婦の妻一人、子ども二人。日本語学校で教えるなどサイドビジネスを含めて十万円はいっていません。公務員の給与は、新卒で七千バーツ、二万円ちょっと。民間大手で一万バーツ、三万円くらい。二人でなんとか生活できるんです。だから、日本の方が毎月、二十万円ぐらいあるのでしたら、優雅に暮らすことができますね。タイ人はわりにまわりと仲良くするタイプですし、外国の方にとって住みやすい所だと思います。
バンコクは大きな街ですが、確かに渋滞はものすごい。
そうですね。しかし最近は、日本の円借款で(交通事情が)だいぶよくなってきました。高速道路がだんだん整備されてきたり、バンコクで初めての電車が中心部を走るようになりました。円借款で地下鉄も建設中です。タイは国民の収入レベルが上がったこともあって日本からの無償援助は基本的には終わっていますが、円借款以外に人道的なもの、NGO、草の根レベルでの協力があります。ですから政府ベース、民間ベースで日本が海外からの援助(経済協力など)に占める割合はとても高い。
軽産業で独特のものはありますか。
繊維ではタイシルクが有名です。地方によって織り方などに違いがあるんですよ。手工芸はいろいろありまして、織物のほか竹細工、皮細工、器などもあります。
両陛下は半年はバンコクにいらして、あとの半年はあちこちの離宮に行かれます。その間、国民の所へ行かれ、どういうことをしているのかとか、どのような手工芸をしているのかなど、いろいろ見て助けていらっしゃいます。昔、山岳民族はケシ(麻薬の原料)栽培をしていましたが、国王陛下は「こういうことはよくない」と考え、勾配のきついところではイチゴやセロリなど熱帯では作れない農作物ができるので、プロジェクトとして推進しました。山岳民族が収入を得られるようにしたのです。
話は変わりますが、昔、日本は海洋民族として船を出していた。それが四百年前の鎖国ごろからできなくなったと聞いているのですが、日本人との交流はどのようなものだったのですか。
文献などによりますとタイは六百年くらい前(アユタヤ時代)には、琉球王国などと交流していたようです。日本で鎖国の時期があったりして途切れちゃったのでしょう。
そちらには日本人町があって、山田長政が十七世紀初めに暮らしていましたね。そのころの方々の子孫はもう残っていませんか。
そうですねぇ、今のタイにいらっしゃる日本の方は比較的新しい方々が中心ですから。タイでは民族性なのでしょうが、どの人とでも結婚することが(当たり前に)あったので、たぶんそのままタイ人になってしまったでしょうね。
結婚すると一番えらいのは男の人ですか。
結婚すると、男性が女性の家に入ることの方が多い。でも苗字は男性の方のを使います。華僑の場合は男性の方に入ります。
秋田県(岩城施設長の出身地)では長男たちの嫁を決めるのは母親で、おかあさんが強かった。今はダメですが、以前は気に入らないと嫁を取り替えられましたから、結婚式を何回もあげることができました(笑い)。
お見合いはなかったですが、親が「この嫁がいいな」という時代はあったと思います。でも、今は恋愛結婚です。
タイでも女性は強いですね。単語から見てもわかります。たとえば、タイ語では司令官を「メータップ」といいますが、「メー」は母、「タップ」は軍隊のことです。川もそのまま訳すと「水の母」。「メー」が母で「ナム」が水、川は「メーナム」なのです。どちらにも「男」という言葉が入っていない。「母」という単語をいろいろな語につけて使った点からみても、母親が強かったのでしょう。
経済は女性が握っていますか。
昔のことはわかりませんが、今はそうではないですね。日本のように男性が外で働いて収入を全部奥さんに渡し、その中からお小遣いをもらうというところまで管理はしていません。都会では共働きが多く、その場合はお互いの収入を出し合い、それを家庭内の費用に使い、個人の収入、小遣いもある。そういう家庭が多いんじゃないかと思います。
タイの方は、酒は強いですか。
ぼく個人の経験では日本人の方が強いと思います。男性はほとんど変わりませんが、女性は一般的にいうとあまり飲みませんね。もともと仏教の教えではあまり飲んではいけないことになっていますし。酒を飲む女性はあまりよくない、とされています。タバコも同じです。日本に比べると社会でも酒のつながりは少ないのではないかと思います。酔っぱらうことはいいこととは考えられていません。
ははぁ。きょうは長い時間、ありがとうございました。
〈編集後記〉取材中、日本に留学されたシントン様が編集部の増田様のお子さんと同じ高校の同期であることが判明。奇遇でした。シントン様は高校時代から日本語の上手さではピカイチの存在だったとのことです。
(松尾)
|