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70歳以上の機関誌「銀杏」
時事討論  
     
 
 英語教育熱に思う
 
鳥山 建夫(七七才)
     

 英語教育熱の高まりを背景に、全国自治体の四分の一が、地域の学校で英語などの指導にあたる外国人の外国語指導助手(ALT)を自前で採用し、その三割の延べ約千二百人を小学校に派遣していることが文部科学省の調査で分ったことが報じられました。小学校に英語の授業はないが、昨年度本格的にスタートした「総合的な学習の時間」に英会話を取り入れる学校が多くなり、ALTの採用は更に増える見通しだといいます。
 英語教育に全面的に反対するつもりはありませんが、小学校で英語を教えるのには反対です。基礎教育では「しつけ」と「読み書き、計算」に重点を置きたいのです。この時期には日本人としてのアイデンティティーの基礎をしっかりと植え付けたいものです。
 英語は、確かに国際語となっていますし、幼少の頃から学んだ方が上達することも事実です。日本人が英会話を苦手としているのも否めませんが、ネイティブの人と同じように流暢に話すことがそんなに必要でしょうか?
 異文化理解は必要ですが、そのために流暢な英会話を身に付けることは必ずしも必要ではありません。教育上一番重要な時期には、日本人としての基礎をしっかり教え込むことが大切だと思います。
 思い起こす五十数年前、終戦を迎えた東京の街にはカッコいい米兵たち、それに群がる女性や子供達が溢れていました。敗戦孤児達は「ギブ・ミー・チョコレート」などと米兵にねだっており、女性達もカタコトの英語で何とか米兵の気を引こうとしていたのです。
 保護者もなく、家も財産も焼かれて、何とか生きなければならないギリギリの姿なのでしょうが、敗戦国の悲しい光景としてこの目に焼き付いています。私も大学在学中でしたが、会話は駄目でも、読み書きなら役に立つ英語力を活用して、進駐軍関係の翻訳の仕事をした経験があります。
 日本国民は幸いにも勤勉なのでこのアメリカ依存の危機を脱して経済大国として甦りましたが、もしこのような状態が続いたなら、完全にアメリカの属国化し、英語が公用語となり、日本語はだんだん用いられなくなって、日本固有の文化は姿を消したでしょう。実際に、「英語を国語に」という動きもあったのを阻止したと聞いています。
 ネイティブのように英語を流暢に話せなくても用事は足せます。小学生のうちから英語を教えれば、どうしても日本語がおろそかになり、やがては日本文化の破壊へとつながって行くでしょう。
 英語教育熱を悪いとは言いませんが、熱しやすい日本人は一つの方向へ走りやすい特性を持つのが心配なのです。英語を流暢に話せる人は少数で良いと思います。日本人全員が流暢に話す必要はありません。私共が何を言っても「ゴマメの歯ぎしり」か「みみずのたわごと」かも知れませんが、日本人のアイデンティティーを保つ重要性を忘れないようにして欲しいのです。

 

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