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70歳以上の機関誌「銀杏」
特別インタビュー  
     
 
 目前に迫る電力危機
 
香山 昭三郎(74歳)
     

 東京電力は原子力発電所の点検補修ルールに違反するという不祥事を起こした。同社は厳しい社会的制裁を受け、社長の辞任を始め幹部を含めた関係者の処分、社内ルールの見直しならびに不祥事の再発防止策をとった。企業の社会的責任を考慮すれば、当然のことであろう。しかし東京電力の監督に当たっていた官庁の皆さんからは、余り責任を感じているようなお言葉が聞かれなかったと思うが、それは私だけであろうか。
 
ところで不思議なのは、原発銀座ともいうべき新潟県や福島県の対応である。聞くところでは、東京電力の原発は地域の同意が得られず、現在そのほとんどがストップしており、供給余力が激減している。今年の夏電力需要のピークが来れば、停電は避けられないという。停電したらどうなるかは、今更いうまでもない。交通、通信など国民の日常生活に必要不可欠な、人体でいえば循環系や神経系に当たる機能がほぼ全滅する。何年か前に米国のカリフォルニア州で電力の供給不足が起こり、大変な騒ぎになったことがあった。原発アレルギーでヒステリックな発言をしている方々は、それがわかっているとはとても思えない。電力供給が不安定になれば、人体でいえば脳溢血と心臓麻痺が同時に起こったようなもの。原発事故は恐ろしいが、その前に国の機能が停止してしまうことは間違いない。
 東京電力は電力危機が来ると声高に悲鳴を上げたいところだろうが、何分自社の不祥事がもとになっているので表だって悲鳴を上げにくい。しかしこれは東京電力一企業の問題ではない。まさに日本国民全員の生き死にに関わる問題である。
 日本の電力価格は外国に比較して高いので、日本の製造業は海外との競争でハンデを背負っているという。たとえば原発を新設しようとすると、莫大な地元補償が必要なようである。これが電力コストにどのくらい影響しているのか、不勉強で聞いたことがない。
 悲しいかな、今日本には国民の間に「ただ酒」「ただ飯」を食おうという風潮がみなぎっているように思う。原発などいわゆる迷惑施設は嫌だ。しかしそれから上がる税金や補償金は欲しい。原発の固定資産償却が進んで固定資産税が減ったから、使用済み核燃料に新たな税金をかけようとしている。
 欧州にも原発は危険だから廃止しろといっている国がたくさんあるらしい。ところがそういう国が原発王国のフランスから電力を買っているという。食糧自給率も大切だが、電力自給率の重要性はこれに劣らない。石油火力発電だけに依存していれば、石油市況に振り回される。地球温暖化ガスや硫黄酸化物、窒素酸化物などの問題を考えれば、石油石炭には依存できない。原発を無視してエネルギーの安定供給が考えられるわけはない。
 専門家任せはいけないが、原発の安全性は専門知識がなければとても素人には理解できない。専門家には素人が理解できるように説明する責任があるし、一方われわれ一般国民はそれを正しく理解し公正な判断を下す義務があると考える。

 

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