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70歳以上の機関誌「銀杏」
特別インタビュー
ポーランド共和国
面積:32.3万km2
人口:約3,830万人
首都:ワルシャワ
元首:アレクサンデル・
  クファシニエフスキ大統領
言語:ポーランド語
通貨単位:ズウォティ
  (1ズウォティは30円)
  EU加盟を果たし、欧州で工業国として発展が期待されるポーランド共和国
 わが国から遠く離れた東欧にあるポーランド共和国は、文化的には楽聖ショパンをはじめ芸術、科学の世界で活躍された人々の祖国であること、地政学的には欧州の強国ドイツとロシアに挟まれ、かつて苦難の歴史を辿られたことは日本でもよく知られています。東欧における民主化の旗手として活躍したワレサ大統領がかつて来日されたこともあり、かねてからわが国との関係は浅からぬものがありました。銀杏編集部は六月十一日午後目黒区三田二丁目のポーランド共和国大使館を訪問し、文化担当官のミロスワフ・ウゥッチコ様からお話を伺いました。訪問したのは岩城祐子会長のほか永田様、島様、増田様、坂本さん、白須賀さんの六名です。
 
     
 
  
 
     

 ポーランドの歴史と現状

 私ども日本人はポーランドのお国に昔から親しみと尊敬の思いを持っていました。お国はかつて戦火にさらされ、国民の皆様は大変ご苦労なさったことと思っています。島国の日本は海で大陸から隔てられているので、この点ではある意味で恵まれていたかも知れません。そのような歴史を持つお国の方々は日本をどのように見ておられるかお聞かせ下さい。

 ポーランドの歴史には確かに苦しい時代がありました。しかし欧州のほかの国々も同じように戦争に苦しんだ歴史を持ち、二度と戦争がないようにという各国の希望がEUをつくる動機になったのです。
ウゥッチコ様に花束を贈られる岩城会長(左) ご承知のようにポーランドはほかの東欧十カ国とともに今年五月一日からEUに加盟しました。かつていろいろなことがありましたが、ドイツ人もポーランド人も同じ欧州の一員としてこれからは仲良くやって行くわけです。歴史は確かに大切ですが、将来はもっと大切だと思っています。ロシアについても同じことです。共産主義時代はロシアは余りに強すぎました。ポーランド人はロシアをビッグ・ブラザーと思っていました。
 ポーランドの最大の貿易相手国は昔はロシア(ソ連)でしたが、今はドイツです。
 ポーランドの若者はドイツ語ができれば、国費でドイツに留学できます。統一後のドイツには現在も東西間に格差があり、東独の優秀な人は西独で働いています。その穴を埋めているのがポーランド人で、東独のビジネス界にどんどん進出しています。労働者が行くだけでなくて、富裕なポーランド人が東独でビジネスをしています。ポーランド人が東独の小さな村でビジネスをして成功し、ついにドイツ人から推されて村長になったという例もあります。

 それは将来の予想ではないのですか。

 いいえ、現在の話です。私が日本に着任してから四年ですが、この間の両国関係の変化は驚くべきものです。
 逆に東独ではポーランド語学習熱が非常に高まっています。かつて東西統合で東独は西から大きな経済援助を受けました。しかしポーランドにはどこからも援助が来ないから、自分の力で働くしかなかった。しかしポーランドでも今ではいわゆる三K仕事は嫌われ、若者は大学に進学してきれいな仕事をしたがります。現在の脱工業化社会では、これは当然の流れだと思っています。低賃金の競争で行けばポーランドも中国の敵ではありません。

 進む欧州の一体化

 欧州はこのようにして、これから平和のうちに一体化が進んで行くのでしょうか。またアラブと米国の関係にも同じようなことが起こるのでしょうか。

 欧州では、国は異なっても共通な文化を持っています。従って一体化は間違いなく進んで行きます。しかしアラブと米国では文化の違いが大きいので、欧州のように一体化することは難しいでしょう。もちろんロシアとイタリアでは文化が大分違っていますが、ポーランドとドイツでは法律にも大きな差がないし一体化は容易です。

 ポーランドの将来

 それではポーランドの将来は非常に明るいと考えられますね。

親しく興味あるお話をしてくださったウゥッチコ様 もちろん将来のことは、EU加盟の是非も含め誰にもわかりません。現在ポーランドとドイツの間には大きな経済格差があります。ポーランドは給料が安いし、物価も安い。失業率はドイツが八パーセントぐらいだと思いますが、ポーランドは二十パーセントぐらい。ドイツは人口の高齢化が非常に進んでいますが、ポーランドは政治的にも経済的にも暗かった八十年代に子供がたくさん産まれたので現在は二十台の若者が多い。
 しかしポーランドも現在は一人っ子家庭が増加しています。少子化傾向は、ほかの先進国と同じです。

 ポーランドの老人の生活

 ポーランドには老人ホームがありますか。
またお年寄りが若い人たちと一緒に住む大家族制はありますか。

 ポーランドにも老人ホームはあります。しかしドイツや日本とは大分違い充実度には差があります。
 大家族制はポーランド南部には少し残っていますが、北部にはありません。これは西欧だけでなくロシアでも共通の現象です。

 ポーランドでは老人の年金はどうですか。

 ポーランドもほかの欧州諸国と同じように年金は比較的高いです。しかし少子化が進んでいるので、将来は情勢が変わり日本と同じ悩みを抱えることになりそうです。社会主義時代は老人になっても働くことが奨励されていましたが、今は変わりました。事情は日本と同じです。社会的には富裕階層ができたが、その一方貧しい階級も生まれています。

 ポーランドの産業

 ポーランドの産業は農業が主体ですか。

 そのような印象をお持ちの方が多いようですが、実はわが国は工業国です。フランスは自国の農業を補助金などで手厚く保護していますが、ポーランドはそうではありません。ポーランドのEU加盟に当たり最大の問題は農業だと新聞に書かれましたが、これは事実に反しています。農業が輸出に占める比率はわずか八パーセントで、工業製品(自動車工業はないが、いろいろな機械製品をつくっている)が六十パーセントを占めています。
 しかしポーランドも将来は脱工業化社会に移行するでしょう。

 日本は平地が少なく農業は苦戦しています。食糧自給率が非常に低い。それと比較してポーランドは平地が多く農業に適しているのではないかと思いますが、いかがですか。また気温は大分寒いですか。

インタビュー風景 左から 本間様、大使閣下、岩城会長、永田様 いやさほど寒くないです。ポーランドは平地が多く、農業適地は全国土の五十パーセントに達しています。しかし基幹作物の小麦やジャガイモは、フランスよりは安くできますがウクライナにはかないません。家畜も同様です。欧州西部とは競争できますが、東の方はもっとコストが安い。ポーランドも自給率は百パーセントではありません。食糧を九パーセントぐらい輸入しています。
 これからの農業あるいは食料品は、二極分化するのではないでしょうか。手作りに近い高品質の食料品と大量生産の安い農産物。日本やポーランドの向かうべき方向は高級品だと思います。
 EUとアメリカでは面積はほぼ同じですが、EUの人口はアメリカの二倍強です。それだけアメリカは人口密度が低い。もっとも私はスウェーデンに行ったことがありますが、全く人が少なく「ほとんど空っぽだった」という印象がありました。(一同爆笑) 日本とは大変な違いです。

 ポーランドにおける日本

 ポーランドの大学で日本学科があるのはワルシャワ大学、クラクフ大学、ボズナン大学などです。私はワルシャワ大学の日本学科で学びましたが、実は日本語を勉強したのは二年間だけです。(一同驚嘆)
 私は日本の歴史に興味があり、卒論は伊藤博文と山県有朋についてまとめました。日本語だけでなく英語の文献もたくさんあり、まとめるのは大変でした。この時代に日露戦争で小国の日本が強大国のロシアを破りました。それがきっかけになって、第一次大戦後にポーランドが独立できたと考えています。
 ポーランド人は日本は素晴らしい国だと思っています。これは外交辞令ではありません。(一同大爆笑)
 第二次大戦にポーランドは連合国の一員で日本は枢軸国でしたが、裏ではいろいろな交流がありました。日本とポーランドの関係は表の話だけではないのです。
 共産圏の力が弱まり、ポーランドでは労働組合の連帯が政権を取りました。ワレサ大統領が来日して、日本の実情を見たワレサ氏はポーランドは第二の日本になるべきだと考えました。彼は日本に学びよく働けと国民に訴えかけました。

 芸術と学術の国ポーランド

 ポーランドは音楽の世界でショパンを生んだほか、大勢のノーベル文学賞受賞者を輩出し、さらに科学技術の世界でもキュリー夫人など歴史に残る大科学者が誕生しています。

日本とポーランドの国旗の前で 左から 増田様、島様、永田様、岩城会長、ウゥッチコ様、白須賀さんの皆様 欧州のほかの国と比較すると、ポーランドは特別な存在ではありません。ポーランドは七カ国と境界を接している欧州の一国です。そのようなこともあり、ショパンの母はポーランド人ですが父はフランス人です。また地動説を唱えた天文学者のコペルニクスは父がポーランド人で、母はドイツ人、キュリー夫人の夫はフランス人でした。
 ポーランドでは映画監督のワイダさんが京都賞の賞金でクラクフに美術館をつくっています。ここには浮世絵のコレクションがあり、日本にもない逸品もあります。また元駐日ポーランド大使がワルシャワ大学日本学科の教授をしておられます。

 岩城会長の持論である農村振興論など、ときどき脱線しながら話は大いに弾みました。これらのテーマについては、また番外編としてご紹介する機会があると思います。
 ウゥッチコ様はワルシャワ大学の日本学科のご出身で、日本語に堪能で高い見識を持ったエリート青年外交官でした。
 お忙しい中を私どもに長時間を割いて、ポーランド共和国の現状と将来、さらには日本との関係についてわかりやすくご説明頂きました。日本についての深い考察など、一同大いに感銘を受けた次第です。
 未来志向のポーランド共和国の繁栄を心からお祈りして、インタービュー記事のまとめにしたいと思います。

(増田)

 

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