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新内節は江戸浄瑠璃の一種であるが、その音楽的特徴を挙げれば義太夫節に用いる大形の三味線「太棹(ふとざお)」でもなく長唄、小唄などの細棹でもない「中棹(ちゅうざお)」の三味線を伴奏楽器として普通は高低の二挺で、上調子は地(じ)の本調子に対し棹に枷(かせ)を付けて二上り調子に調弦し細かく装飾的に絡むように弾かれ、独特の高音を聞かせるのが特徴である。
他の浄瑠璃に比べて「くどき」(口説…心情をかきくどく部分)が長くその「くどき」が主体をなしている。くどきは「うれい」という曲節を使い、哀愁を一層強めている。そして独特の悲哀感の籠った搾り出すような発声法で聴く人の心を捉えている。
明烏夢泡雪(あけがらすゆめのあわゆき)
明和六年(一七六九年)浅草蔵前伊勢屋の養子伊之助と吉原の遊女三芳野の心中事件を題材とした浄瑠璃で初代鶴賀若狭掾の作である。
上の巻浦里部屋の段 遊女浦里と春日屋時次郎が深い馴染の末、みどりという子供までできたが金の工面も侭ならぬ時次郎に対し、女郎屋の亭主は冷たく、浦里と逢わせようとせず、密かに忍んで逢いに来る度に見付かって楼外に突き出される。
下の巻浦里雪責の段 浦里が内緒で時次郎を部屋に引き入れた為、降りしきる雪の中に引き出されて古木に括り付けられ折檻されるが時次郎と縁を切ると言わないので遣手のお萱と亭主は子供のみどりを責めたて浦里に意見したまま、降り止まぬ雪の中に二人を置き去りにして奥に入ってしまう。そこに時次郎が二人を助けに塀を乗り越えて忍び込み、手に手を取って廓から逃れ去るという内容である。
若木仇名草(わかきのあだなぐさ)「蘭蝶」
初代鶴賀若狭掾の作で安永初年(一七七二年)のものとされており現存の新内節としては、明烏と並んで最古のもので、新内節と言えばこの蘭蝶とまで言われる浄瑠璃である。
榊屋口説の段 或る武士が零落の果て蘭蝶と名乗って太鼓持ちとなりお宮という女房がありながら遊女の此糸(このいと)に馴染み、一向に家業を顧みないので、女房お宮が密かに此糸を訪ね、縁を切ってくれと頼み込む。此糸は情けと義理にひかされ致し方なく蘭蝶との縁切りをお宮と約束するが、後で蘭蝶に詰られて遂に情死を覚悟するという筋である。
蘭蝶と女房のお宮、それに遊女此糸との三角関係、義理と人情との交錯を主題とし、恋愛至上主義をうたった作品の一つである。
蘭蝶の「縁でこそあれ末かけて」とはじまる「くどき」の部分はこれだけ聴けば他の曲はいらないという極端な聴衆もいるほどの人気曲となっている。
新内節には心中話が多く、頽廃的な廓情緒を描写しているがその頽廃美とでもいうものが新内の命であろう。哀切と粋の美学との絶妙な調和で成り立つ芸でじっくり味わいたいところである。
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