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70歳以上の機関誌「銀杏」
権利と義務
     
 
  
 
 
島 健二(七八才)
 
 
 

 戦後民主主義の名の下に権利の主張が叫ばれました。それ自体は結構ですが、教育のやり方に問題がありました。戦争経験から団結した日本人の強さを知ったアメリカが日本人を利己的にしてバラバラにしようとする占領政策にはまってしまったことです。
 権利の主張の反面には義務の履行があります。国民としての義務をキチンと履行する者だけが権利を主張できるのですが、戦後教育では権利主張のみが強調されたので、戦後の教育を受けた日本人は権利主張のみに目覚めて、義務履行を忘れてしまったようです。
義務履行を伴わない権利のみの主張の二三の例を挙げたいと思います。
 無党派層と呼ばれる人々の集団があります。政党、政治家に信頼が置けないことは事実ですが、だからこそ選挙での投票権を行使して、少しでも信頼を置けそうな選良を選出するのが国民の義務だと思います。棄権をするばかりでは政治は変えられません。選挙における投票という義務を履行しないで、政治不信を論じる権利はありません。
 年金問題ではみっともない茶番劇が演じられました。政府・自民党の年金改正案は過去の運営の大失態を曝け出しながら、抜本的な制度改訂を行わずに、保険料の引上げと給付の引下げを国民に強いて、旧来の制度を維持しようとする数字合わせに過ぎません。それを強行しようとする与党側と、阻もうとする野党側双方の政治家に、過去の保険料未納が続々と露呈したのには呆れました。参議院で、与党が質疑打ち切りをして強行採決を図り、野党が不信任案の連発や牛歩戦術で乱闘騒ぎが起きたのは双方の責任です。しかもこれらは近付く参院選に向けた与野党の党利、党略で、国民不在ですから腹が立ちます。
 構造改革を標榜する小泉首相はこの改正案を強行採決せず、保険の本質を知らない役人の出鱈目な運営排除のために、初めから民間専門業者への運営委託を考慮すべきでした。また国民の側も制度の不備を未加入、保険料未納の理由にしてはなりません。保険料納入という義務を履行してはじめて「制度を改正すべし」と権利の主張が出来るのです。
 イラクでの人質事件は旧聞ですが、風化させてはなりません。数十億という多額の税金を費消し、国民の心配と政府の努力で救出された渦中の人達は事柄の本質が分からないようです。記者会見での発言に反省がなく、「大変有り難うございました」という発言だけで、「ご迷惑を掛けて申し訳ありません」という言葉がありません。「悪いことをした、迷惑を掛けた」と認識していません。オフィシャルな政府活動を補うボランティアやNGO活動は有意義ですが、政府には「国民の保護」の義務があります。「危険だから渡航を自粛してほしい」という政府の勧告に従うのが国民の義務です。多大の迷惑を掛けながら、「自己責任論は心外だ」、「又現地へ行きたい」などと発言するのはもっての外です。これも義務の履行なき権利のみの主張です。

 

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