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  戒石銘に思う
 
 
増田次郎(77歳)
 
     

 大阪市の職員がいろいろな形で庶民には考えられないような手当を受け取っていたという話が、先日来テレビや新聞で伝えられました。公務員も人間。給料が高い方がよいと思うのは当然でしょう。しかし皆さんのもらう給料はいうまでもなく、市民が楽でない暮らしの中で苦しんで納めた税金です。
 福島県の二本松城の大手に、大きな岩がありここに「戒石銘」という殿様(丹羽様)が藩士に与えた教訓が彫ってあります。ここにその文章をご紹介します。
 爾俸爾禄、民膏民脂、下民易虐、上天難欺。「汝の俸、汝の禄は、民の膏、民の脂、下民虐げ(しいたげ)易しといえども、上天は欺き難し」と読むのではないかと思います。増田流の乱暴現代語訳では「お前らが頂く給料は、庶民の汗とあぶらの結晶、庶民をいじめるのはやさしいことだが、お天道様の目は騙せないぞ」となります。
 この戒石銘の碑ができあがったのは、寛延二年(千七百四十九年)三月だそうで今から二百五十年余り前のことです。五代藩主の丹羽高寛(たかひろ)公が儒者の岩井田昨非(いわいださくひ)の進言で彫らせたものだそうです。封建時代のお殿様がこういう形でご家来たちを戒められた。それも家来の通勤ルートのお城の入り口に掲示されたというのは、本当に立派なことだと思います。
 ところで大阪市のお手盛り手当の報道で私が一番不愉快だったのは、市と職員組合の団体交渉で組合側から罵声が飛んだという話です。前三重県知事の北川正恭氏は、在任中労使交渉の「使」は県民である。県知事は使用者ではないといって、労使交渉の内容を全て公開していたと聞きます。大阪市職員の大半は「使」が府民であることを自覚しておられるものと私は信じています。どうぞ市役所の玄関に戒石銘を掲げて、自分たちが市民にサービスするための職員であることを常に意識して頂きたいものだと思います。
 これは大阪市だけの問題ではないと思っています。小泉首相にも、全国会議員にも、官公庁の職員にも、戒石銘の精神を思い起こして頂きたいのです。小泉さんは後世に名宰相の名を残したければ、在任中に税金を下げられなくても将来のため小さい政府をつくることを考えるべきではないでしょうか。
 道路公団がらみの談合問題。道路公団の偉い人は自分の老後のことしか考えていないのでしょうか。長年働いた公団の不利益を図ることは犯罪行為だと思わないのでしょうか。
 私も厚生年金を頂いています。私がかつて納めた保険料は全部先輩が使い、私が頂いている年金の原資は現役の皆さんの膏であり脂で、たとえ老人であっても何か社会のお役に立たなければいけないと思っています。生活保護、障害年金を受けている方ももちろんそうです。全ての税金で食べている皆さん。日本が滅びないために、子孫のため明るい未来を迎えるためにも、一層奮励努力しようではありませんか。

 

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