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久田恵著
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  母のいる場所 − シルバービラ向山物語  
 
  久田恵著/文芸春秋/1667円  
 
 
表紙
 
 
  帯から  
 
  酒・煙草OK、門限なし、入居者同士の子家も日常茶飯事の「高齢者専用長期滞在ホテル」へようこそ!

「お分かりにならなかったり」元気だったりする入居者たち、侠気の女社長、気配りセンム、個性豊かなヘルパーさん、そしてヒサダ家の人々……。愉快な面々が繰り広げる、あふれる愛とすこしの涙の物語。

十年の在宅介護ののち、母と一緒にいっぷう変わった有料老人ホームへ行くことを、我が家は決断したのだ―

 
 
 
  第一章 我が家の決断/ホーム生活が始まった
  第二章 思い出の草津温泉旅行/村田さんのお葬式
  第三章 母の容態/介護保険狂想曲
  第四章 お花見のよる/ミニコミを出そう
  第五章 母の死
 
 
  書評  
 
 

中島久美子(なかじまくみこ・フリーランスライター)
  これまでの久田さんの作品には、どんな状況もしなやかな発想と明るいバイタリティで切り抜ける姿が描かれてきた。それは、離婚や子育てに悩む多くの女性たちを勇気づけてきた。
その久田さんが、これほど弱さをさらけ出したことがあるだろうか――それが本書を読み始めたときの印象だった。
 本書は脳血栓で倒れた母親を在宅で10年、有料老人ホームで2年半の介護の後、看取るまでの体験を綴ったノンフィクションだ。1日たりとも安らぐことがなく、日々自分の他者への誠実さや優しさや忍耐力が問われ続ける介護。その状況に長年心身をさらしていると本当に傷つき果てる、久田さんは書く。
 けれども、どうにも動きのとれない精神の窒息状況に陥った時、居場所を大きく変えてみるのが、これまでの久田さんの行き方だ。取材を通じて知った介護型のホームに母を入居させ、父親は同系列の自立型へ、自分は近くのマンションへ引っ越す。
 思い切った選択は家族を救う。このホームが実に魅力的になのだ。規則はなく、門限なし、お酒も恋愛も自由というのびやかさ。平均年齢85歳。元気な人も痴呆症の人も自由に行き来する。70代のヘルパーさんもいる。ホームの女社長は70代。その仕切り方の見事なこと!
 運営に当たる次男の専務もなかなかのものだ。たとえば痴呆症の老婦人が「お母さんが冷たくて、お金をくれないの。申し訳ないから働かせてください」と日に何度もやってくる。そのたびに専務はいうのだ「いいの、歌子さんはお金いらないの。美人だから。ウチの看板娘だから、もういてくれるだけでウチはお金が儲かるの」。82歳の老婦人は安心する。
 ホームは、血縁を超えた家族の温かさに満ちている。福祉の現場は何かと批判されることが多いが、こんなホームもあるし、経営者の抱く志次第で、夢は可能になる。著者の介護体験に泣き笑いしながら、そんなことを考えさせてくれる一冊である。

(『潮』02年1月号所収)

 
 
 
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